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雑誌

実話ナックルズ

岩下 清伸

実話ナックルズの取材 2004年

取材文 大和新聞

山内重雄

撮影 フライデー写真記者

川柳まさ裕 現在は減税党の現職議員

地下格闘家 [岩下 清伸]の流儀

[格闘家]には二種類ある。大観衆の前で闘いを繰り広げて喝采を浴びる[プロ格闘家]。そして、見世物やギャンブルという側面の強い非公式なリングでひたすらファイトマネーと強者のみを求める[地下格闘家]だ。光と影のような両者が闘うことは、ほとんどない。[ほとんど]…。地下格闘家でありながらプロ格闘家のスターと拳を交える。光と影が交わった奇跡のリング。

マリファナの煙がたちこめる会場

金網&フローリングの[地下リング]

岩下清伸が格闘の道に入ったのは小学生の時である。[空手バカ一代](梶原一騎原作、つのだじろう.影丸讓也画)の影響をうけて極真空手の道場に通ったのがきっかけだった。

もともと身体能力は高く、中・高と陸上部で活躍。高校時代は砲丸投げの選手として同世代で親交もあったハンマー投げの室伏広治やマラソンの高橋尚子とかたを並べ、東海地区のアスリートのひとりとして注目を浴びていた。

昼は陸上競技に打ち込みつつも、夜は道場で学んだ技を試す為、実戦を求めて地元・岐阜の繁華街を彷徨い歩くようになる岩下。気がつけば、彼は、[裏の世界]からお呼びがかかるほどの喧嘩屋になっていた。しかし、周囲の期待をよそに高校を卒業した岩下は単身カナダのバンクーバーに渡る。広い世界を見たい、という思いからだ。カナダインターナショナルカレッジという学校の食堂でコックをしながら語学力を覚える日々のなか、ひょんなことから日系人の空手家と知り合う。この出会いが彼の運命を大きく変えることになる。

[地下プロレスにでてみないか?]

連れていかれたのは、倉庫のような場所だった。マリファナの煙が立ちこめ、異様な熱気につつまれたリングが。しかもマットではなく普通のフローリングである。そこでふたりが屈強にくみあっていた。最初は呆気にとられた岩下だが、試合を観戦するうちに格闘家として血が騒ぎ、これなら自分にもできる、と判断して参戦してみた。案の定、初試合では数秒で相手を倒した。賞金は1000ドル。マネジャーということで、日系人に半分持っていかれるが、悪くない稼ぎだ。

定期的にリングにあがり、賞金を稼ぐようになる岩下だが、ほどなくある相手に数秒で気を失わされ、目が覚めると馬乗りて乱打されていた。これが岩下、生涯初の敗北にしてブラジル柔術との初対戦だった。

ショックから立ち直った岩下は、ほどなくコックをしている学校で、[グランドアーティスト]なる異種格闘技クラブを設立。岐阜で負け知らずだった自分に屈辱を味わせた柔術をはじめ、ありとあらゆる格闘技の経験者を招き、より実戦的な格闘を探求しはじめたのだ。この団体は今でもカナダで継続している。そのように真撃に強さを求める日本人格闘家の噂はまたたくまに広まり、カナダの軍隊に招かれ、空手のコーチをするまでになった。鍛錬を重ねた岩下は、ついに地下プロレスのトーナメントで並み居る強豪をくだし、チャンピオンになり、日本円にして200万円ほどの賞金を手にしたのである。

ピーター・アーツと拳を合わせて(確信)にかわったある思い。

チャンピオンになったのを機に、帰国した岩下は地元に自分の道場を開く。その一方で、友人とアパレルのビジネスをはじめるなど充実した日々を送っていたが、何処か物足りなさを感じていた。地下プロレスで味わったような刺激が無いのだ。次第に熱気も失いかけていたとき、ある運命的な出会いが訪れる。2003年末、k1に出場するために名古屋に滞在していたピーター・アーツを囲む夕食会が市内のホテルで、催された。そこに同席していた岩下は、初めて目にするプロ格闘家を前に忘れかけていたものがこみあげる。気がつけば岩下はアーツに近づいて言っていた。あなたと対戦させてくれないか?…仮にも相手はk1のスーパースター、しかも、巨額なファイトマネーが支払われる大事な試合前である。常識で考えれば無名の空手家が何を、と一笑に付するところだが、このときのアーツは違った。[非公開の練習]という名目で拳を交えることを快く承諾したのである。ただひたすら強さを求めてきた一流の男が、やはり、日の当たらぬ場所で牙を研ぎ続けてきた男に、自分と同じ臭いを感じ取ったのであろうか。

『こちらは試合が近いピーターに怪我をさせることは出来ないと思っていたが、逆に殺されないようにね"と言われたよ。』実際に拳を合わせた感想は…内容についてはピーターの関係者から固く口止めされているので、これ以上言うことも出来ないが、俺がやってきた間違っていなかったと納得できるものだった。闘う者だけが、分かり合えるものがあった。そう言って不敵に微笑む岩下。これを機会に岩下とアーツは今も互いに認め合う仲となった。

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